
目次
歯を失った後の選択肢は、残っている歯と将来のお口全体から整理する
入れ歯かインプラントかで迷ったときは、費用や噛み心地だけで決める前に、残っている歯と噛み合わせを確かめ、この先のお口全体から、歯がないところの補い方を考えることが判断の軸になります。この記事では、あごの骨の状態や持病によって治療の期間がどう変わるか、手入れや管理まで含めた費用の見方、歯科医院へ相談する前に用意したい資料と質問を整理します。
この記事の要点まとめ
- 入れ歯かインプラントかは、歯がないところだけでなく、残っている歯やかみ合わせ、この先のお口全体をふまえて考えます。
- あごの骨や体の状態によって、ほかに必要な処置や治療にかかる期間が変わります。そのため、検査と、主治医との話のやりとりが決めるときの材料になります。
- 費用は検査やその後の管理まで含めて確かめ、お薬手帳や検査の結果、希望や質問を用意して歯科医院へ相談しましょう。
- 入れ歯とインプラントは、何から順に考えればいい?
- 顎の骨の状態や糖尿病で、選べる治療と期間は変わる?
- 費用と治療期間は、どこまで含めて見積もりを聞けばいい?
- インプラント相談の前に、何を準備して何を伝えればいい?
- よくある質問
- 参考文献
- 監修
入れ歯とインプラントは、何から順に考えればいい?
欠損した部分だけをどう補うかではなく、残っている歯の状態や全体の噛み合わせ、将来のお口の見通しから順に確認していくことが大切です。「抜けた本数分を埋めれば終わり」と考えると、後から別の歯に負担がかかることがあります。歯がないまま長期間放置すると、噛み合う反対側の歯が伸び出したり隣の歯が傾いたりして、歯並びや顎の動き、食べ物を砕く機能に支障が出ることがあります1。インプラントの上部構造(人工の歯)の設計も長期的な経過に関わるため、事前の計画が欠かせません2。
治療法を決める前に、残っている歯と将来の口腔内を確認する
当院では、インプラントは一度うめこむと基本的に位置を変えられないため、いま歯がない場所だけで決めていません。この先のお口の状態まで見すえて、本数とうめこむ位置を計算しています。たとえば奥歯を2本失った場合でも、その場所だけを見るのではなく、歯周病などの影響を受けている残った歯がこの先どう変わるかも含めて全体の計画を確かめてから、具体的な治療法を考える順番をご提案しています。
歯を失った原因によっては、欠損部以外の治療も検討する
ご自身の歯を大切に守りながら治療を進めるには、なぜその歯を失ったのかという背景を調べる必要があります。当院では、歯を失った原因が噛み合わせにある場合、インプラント治療だけで終わらせず、長期的に適切な噛み合わせや口腔環境を整えるために矯正治療との併用をご提案しています。矯正治療はすべての方に必要なわけではありませんが、インプラントと矯正の双方を扱う体制のもと、噛み合わせが関わる場合の選択肢として検討します。
固定方法・噛み心地・手入れの違いを、会食や出張の場面に当てはめる
部分入れ歯は、残っている歯にバネなどをかけて止め、毎日はずして洗います。洗うときは細かい傷がついたり細菌が増えたりするのを防ぐため、研磨剤入りの歯みがき粉は使いません3。一方、インプラントはあごの骨に固定するためはずす必要はなく、自分の歯に近い感じで手入れをします。
治療法によってかむ感じや力の伝わり方はちがいますが、お口の状態や設計によって人それぞれで、食べられる物や満足のしかたがそれだけで決まるわけではありません。入れ歯の床(土台の部分)が舌の動きや舌で押す力、話しやすさにかかわることや、設計によって金具の見え方が変わることも、会食や出張などの場面に当てはめて、相談のときに確かめておきましょう。
顎の骨の状態や糖尿病で、選べる治療と期間は変わる?

顎の骨の量や厚み、血糖管理などの全身状態によって、追加処置の有無や治療期間、治療の進め方が変わります。骨が足りないからといって一律にインプラントができないわけではなく、反対に骨を補えばどのような状態でも治療できるとも限りません。検査で骨と全身の状態を確かめたうえで、追加処置の必要性を判断していきます。
骨の量や厚みによって、追加の処置が必要になることがある
顎の骨を土台とするインプラントでは、埋め込む場所に一定の骨の量や厚みが求められます。当院では、顎骨の量や厚みが不足する場合には骨造成(骨を補う処置)を検討しています。GBR(骨誘導再生法)では骨補填剤と膜を用い、上顎の奥歯では骨を補う範囲などに応じてソケットリフトやサイナスリフトを使い分けています。
処置を行う部位や範囲によって身体への負担も異なります。ご自身の骨の状態に応じた対応が可能かどうか、事前の検査を通して確認しましょう。
治療期間は、骨造成を行う時期によっても変わる
埋め込んだチタン製のインプラントが顎の骨としっかり結びつく(オッセオインテグレーション)のを待ってから、人工の歯を取り付けます。当院では、骨造成をインプラントの埋入手術と同時に行える場合と、骨造成の後に骨量の増加を待ってから埋入する場合を区別し、それぞれの治療期間の違いも事前に説明しています。全体の期間を一律の数字で捉えるのではなく、治療完了までの総期間、実際の来院回数、仕事の日程調整が必要な日を分けて確認することが大切です。
糖尿病や歯周病、喫煙がある場合に主治医と共有したいこと
手術をともなう治療では、体全体の健康の状態が治りぐあいにかかわります。手術のときに血糖値が高すぎると、傷が治りにくく、ばい菌に感染しやすくなることがあるため、前もって血糖値を整えます4。また、歯周病やたばこを吸う習慣も、治療のあとの経過や残っている歯のこの先に影響します。
糖尿病などで薬を飲んでいる方は、治療できるかどうかを自分で決めないでください。いまの血糖の状態や飲んでいる薬を内科の主治医と歯科医院の両方に伝えたうえで、進め方を考えましょう。
ポイント
骨を補う処置をするか、いつするか、血糖の状態はどうかによって、治療の期間や進め方が変わります。そのため、前もっての検査と、内科と歯科での情報の共有が判断のもとになります。
費用と治療期間は、どこまで含めて見積もりを聞けばいい?
治療法をくらべるときは、はじめにかかる費用だけでなく、前もっての検査や追加の処置、つけたあとの修理・作り直し、定期的な管理まで含めて内わけを歯科医院に確かめることが欠かせません。自由診療(公的な医療保険が使えない診療)は費用をすべて自分で払うことになり、選ぶ素材や設計によっても金額が変わります。なお、インプラントは手術をともなうため、手術のあとに痛みや腫れ、出血が出たり、合併症が起きたりすることがあります5。
| 項目 | 部分入れ歯(保険適用) | 部分入れ歯(自由診療) | インプラント(自由診療) |
|---|---|---|---|
| 費用の目安 | 自己負担の割合で決まる | 素材・設計によって変わる | 当院は1本税込385,000円(別に精密検査55,000円) |
| 治療期間の目安 | 型取りと調整のための通院が必要 | 素材・設計によって変わる | 骨と結びつくまで約3〜6カ月待つ6 |
| 使用年数の目安 | 使い方や調整によって変わる | 設計・管理による | 手入れと定期管理によって変わる |
保険の入れ歯と自費の治療、維持管理まで含めた費用の考え方
上の表のとおり、保険の入れ歯と自費の治療では、費用の決まり方がちがいます。自費の入れ歯は、選ぶ素材や設計によって金額が変わります。使える年数も手入れや定期的な管理で変わり、交換の時期を約束するものではありません。
当院のインプラントは1本350,000円(税込385,000円)で、ほかに精密検査55,000円がかかります。骨を補う処置が必要な場合は、1カ所55,000円が加わります。歯の本数や処置の内容で変わるため、くわしい総額は検査のあとにご案内します。
見積もりを聞くときは、検査、仮の歯、手術、上部構造、調整、定期管理がどこまで含まれるかを確かめましょう。あわせて、骨を補う処置などで追加の費用がかかる条件も聞いておきます。
総期間・来院回数・仕事を調整する日は分けて質問する
部分入れ歯は、型取りと調整のための通院が必要です。インプラントでは骨と結びつくまで待つ期間6があり、骨造成を行う場合は、さらに期間が延びることがあります。ただし、治療全体の期間が長くても、その間ずっと毎週通院するわけではありません。
仕事の予定と合わせるときは、「治療完了までの総期間」「実際の来院回数と1回あたりの所要時間」を分けて質問しましょう。「手術日前後に外回りや会食の調整が必要になる日」「治療中に歯がない期間が生じるかと仮の歯の有無」も別々に聞いておきます。こうして分けて聞くと、スケジュールを見通しやすくなります。
初回の確認と精密検査では、分かることと費用の範囲を分けて聞く
相談に行く際は、初回のカウンセリングで分かることと、精密検査で調べることを分けて捉えておくと、聞き漏らしを防げます。
当院では、精密検査で歯科用CT、セファロ(頭部X線規格写真)、模型印象採取(歯型取り)を使います。得られたデータをもとに3次元でのシミュレーションを重ねたうえで、具体的な治療計画と検査費用をご説明しています。初回の確認の後にどの段階で精密検査に進むのか、また検査にかかる費用の範囲についても、事前に歯科医院へ確認しておきましょう。
インプラント相談の前に、何を準備して何を伝えればいい?
相談をスムーズに進めるには、残っている歯や骨の状態は歯科医院の検査で確認し、ご自身の生活上の希望や持病の情報は自分から伝える、と役割を分けて準備しておくことが役立ちます。その場で治療法を即決する必要はありませんので、まずは判断材料を集めるつもりで足を運んでみてください。
最初の相談で確認する状態と、先に伝えたい生活上の希望
当院では、カウンセリングで口腔内の確認とレントゲン撮影を行い、顎骨や残存歯の状態、患者さまのご希望を踏まえて治療内容をご提案しています。会食の機会が多く片側ばかりで噛んでいること、出張や仕事の予定、学費やローンなど家計の計画と合わせた支出へのご希望があれば、最初の段階でお聞かせください。また、外科手術に対する不安や恐怖心がある場合も、静脈内鎮静法などの選択肢を含めて検討できますので、遠慮せずお伝えください。
糖尿病の検査結果やお薬手帳など、持参したい資料と質問リスト
全身の健康状態を踏まえて相談できるよう、以下の資料がお手元にあれば持参すると話が進めやすくなります。
- 持参したい資料:いま使っているお薬手帳、糖尿病などで血糖を調べた最近の結果(HbA1cなど)、主治医が書いた病状の書類、ほかの歯科医院で撮った画像や説明の資料
- 確認したい質問リスト:残っている歯がこの先どうなるか、骨を補う処置がいるかとその期間を聞きましょう。見積もりの内わけと追加の費用がかかる条件、通う回数と手術日の前後の過ごし方、入れたあとの修理や定期的な管理にかかる費用も確かめておきます。
金山駅近くで、通勤途中に通院を組み込めるかを確かめる
インプラントや入れ歯の治療は、前もっての検査から、つけたあとの定期的なメンテナンスまで、しばらく通うことが続きます。当院は名古屋市中区の金山駅5番出口から歩いて2分のところにあります。仕事に行く道の途中で検査や定期的な管理の予定を入れられるかどうかも、むりなく治療を続けるための目安になります。
いまのお口の状態や治療の選び方を整理したい方は、どうぞ遠慮せず当院までご相談ください。
よくある質問
Q. 入れ歯やインプラントと、ブリッジやインプラントデンチャーはどう違いますか?
A. ブリッジは欠損部の両隣の歯を削って支えにし、一体型の人工歯を被せる固定式の治療法です。一方、インプラントデンチャー(インプラントオーバーデンチャー)は、顎の骨に埋め込んだ少数のインプラントを支えにして入れ歯を固定する方法です。総入れ歯にも部分入れ歯にも用いられ、取り外しのできる入れ歯の形のまま、インプラントを支えにする点が通常の入れ歯との違いです。
残っている歯や骨の状態によって向き不向きが異なります。
Q. 入れ歯をしている人やインプラント治療を考える人は、喫煙してもいいですか?
A. たばこを吸う人は吸わない人より歯周病になりやすく、悪くなりやすいうえ、治療をしても治りがよくないことがわかっています7。これは入れ歯を支える残っている歯の寿命にも関わります。インプラント治療を考えている場合も、たばこを吸っていることを前もって伝え、禁煙または本数を減らすことを歯科医師と相談しましょう。
Q. 歯科医院で「5,000円程度払う」と聞くことがあるのはどんな費用ですか?
A. 保険が使える部分入れ歯をつくるときに、窓口で払う金額のことが考えられます。この金額は、自分で払う割合(3割など)や、なくした歯の数、入れ歯の形によって変わります。ほかに、はじめてかかったときの検査代や、自費の相談・検査の料金のこともあるため、何の費用かはかかる歯科医院へ前もって聞いてください。
参考文献
1. 入れ歯 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/lose/index17_03.html
2. Kondo Y, Sakai K, Minakuchi H et al. Implant-supported fixed prostheses with cantilever: a systematic review and meta-analysis. International journal of implant dentistry (2024). PMID: 39570465 / DOI: 10.1186/s40729-024-00573-8
3. 清潔な入れ歯でなんでもおいしく食べよう! | 大垣市公式ホームページ/水の都おおがき. https://www.city.ogaki.lg.jp/0000020630.html
4. 糖尿病とがん、2つの治療をされる方へ | 国立健康危機管理研究機構. https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/070/080/01.html
5. インプラントのメリット・デメリット | 公益社団法人日本口腔インプラント学会. https://www.shika-implant.org/min-implant/beginner/merit/
6. インプラント歯科|昭和医科大学歯科病院. https://www.showa-u.ac.jp/SUHD/department/list/implant/
7. 喫煙と歯周病の関係 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-011.html
2011年 春日井市民病院歯科口腔外科 臨床研修医
2012年 春日井市民病院 麻酔科研修
2013年 愛知学院大学大学院歯学研究科 入学
2013年 国立長寿医療研究センター研究所 再生歯科医療研究部研究員
2013年 春日井市民病院 歯科口腔外科 非常勤
2017年 博士(歯学)の学位取得
2017年 公立陶生病院歯科口腔外科 常勤
2022年 公立陶生病院歯科口腔外科 部長
2024年 医療法人社団健正会 名駅ファイン歯科・矯正歯科 常勤
2024年 愛知学院大学歯学部口腔内科学講座 招聘教員
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本口腔科学会 認定医
日本有病者歯科医療学会 認定医
日本顎関節学会 認定医
日本歯科麻酔学会 登録医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定歯科医師
インフェクション・コントロールドクター
AHA ACLS プロバイダー
歯科医師臨床研修指導歯科医講習会修了
日本救急医学会 ICLSコース修了
日本顎関節学会 会員
日本歯科麻酔学会 会員
Asian Association of Oral and Maxillofacial Surgeons 会員
その他、筆頭論文・共著論文 計21編、学会演者・共同演者 計33回
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