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子供の口呼吸が歯並びに与える影響と、家庭でできる見分け方や対策

子供の口呼吸が歯並びに与える影響と、家庭でできる見分け方や対策

目次

お子様の口呼吸と歯並びの関係を整理する


お子様の口呼吸は、舌や唇の位置を通して上あごの育ちや歯並びへ影響することがありますが、すべてのお子様の歯並びが変わるわけではありません。生え替わりの時期は見た目だけではわかりにくいことも多く、まずは起きているときや寝ているときの様子、鼻の通りを確かめることが手がかりになります。この記事では、口呼吸と歯並びのしくみ、家でメモしておきたいサイン、耳鼻咽喉科と歯科医院のどちらに相談するかの目安をお伝えします。


この記事の要点まとめ


  • 口呼吸は舌や唇の力を通して歯並びへ影響することがありますが、骨格やくせも関わります。
  • 起きているときと寝ているときの口元や鼻づまりを数週間メモし、鼻の通りを見て対応を考えます。
  • 鼻づまりやいびきは耳鼻咽喉科、歯並びや噛み合わせは歯科で相談し、必要なときは両方で連携します。


子供の口呼吸は歯並びにどんな影響を与えるの?

子供の口呼吸は歯並びにどんな影響を与えるの?

口呼吸が長く続くと、舌が本来の位置より下がり、唇で前歯を支える力も弱まるため、上あごの幅や前歯の傾きに影響が出る場合があります1。ただし歯並びは骨格や遺伝、指しゃぶりなどの複数の要素が関わるため、口呼吸だけが原因とは限りません。


舌が下がると舌圧と唇の力のバランスが崩れ、歯列の幅に関わる理由


歯は、内がわから押す舌の力(舌圧)と、外がわから支える唇やほおの筋肉の力がつり合うところに並びます。鼻で息をしているときは舌が上あごの天井にふれ、内がわから上あごの育ちを支えています。


一方で口呼吸になると、空気の通り道を確保するために舌が下あご側へ下がる「舌低位」になりやすく、上あごを広げる舌圧がかかりにくくなります。同時に口が開いたままになることで、唇が前歯を外側から抑える力も弱まります。


口呼吸は、顔の骨の育ちやかみ合わせの乱れ(不正咬合)と深く関わるといわれています1。お子様では、口呼吸が顔のたての向きの育ちに関わることがあります。


出っ歯や開咬と結びつきやすい一方で、原因は口呼吸だけではない


口呼吸との関連が指摘されやすい歯並びとしては、上の前歯が前方へ傾く出っ歯(上顎前突)や、奥歯で噛んでも上下の前歯にすき間ができる開咬、あごの歯列弓(歯並びのアーチ)が狭くなり歯が重なる叢生があります。


とくに開咬は、口呼吸や扁桃・アデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)の肥大だけが原因ではありません。指しゃぶりや舌を前に押し出す舌癖、生まれつきの骨格の育ち方など、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。


また、お子様の開咬を治す方法はいくつか提案されていますが、どれも強い科学的な裏づけがあるとはいえません2。そのため、一つの原因や方法に決めつけずにお口の状態を見極める姿勢が求められます。


「口呼吸があれば歯並びは悪くなる」はよくある誤解


口で呼吸している様子が見られても、歯並びが目立って変わらないお子様もいます。反対に、普段から鼻呼吸ができていても、ご両親から受け継いだ顎の骨格や歯の大きさのバランスによって歯が重なるケースも珍しくありません。


口が開いていることに気づくと心配になる保護者の方は多いですが、口呼吸の有無だけで将来の歯並びが決まるわけではありません1。まずは口呼吸が続いている期間や程度、鼻の通り具合を合わせて落ち着いて確認していきましょう。


ポイント

歯並びは舌圧と唇の力のバランスに影響を受けますが、口呼吸だけでなく骨格や生活習慣など複数の要因を合わせて見極める必要があります。


生え替わり中の前歯が出て見えるのは口呼吸のせい?


乳歯と永久歯がまじる時期は、生えてきたばかりの永久歯が大きく見えたり、しばらくすき間や傾きが目立ったりします。そのため、いまの見た目だけで口呼吸の影響や将来の出っ歯と決めるのは早いことがあります。


永久歯の前歯が大きく見える・すき間が目立つ時期の特徴


6〜9歳前後の生え替わり期は、まだ小さな顎の骨に対して大人と同じ大きさの永久歯が生えてきます。顎の成長が追いつくまでの間は、前歯が以前より前に出て見えたり、歯と歯の間にすき間ができたりすることがよくあります。


これらは成長にともなって自然に馴染んでいくこともありますが、普段から唇が閉じにくそうにしている場合や、上下の前歯が噛み合わず縦に重ならない状態が続く場合は注意が必要です12。生え替わりの一時的な見え方だけでは説明しにくいサインとして、一度歯科医院で状態を確認する目安になります。


親から受け継ぐ骨格と、口呼吸などの習慣を分けて考える


保護者の方ご自身に前歯の突出や矯正治療の経験があると、「自分の歯並びが遺伝したのではないか」と気になりやすいものです。確かに上下の顎の大きさや位置関係といった骨格的な特徴は、親から子へ受け継がれることがあります。


しかし、お子様の口元には、骨の形だけでなく、舌の位置や唇の閉じ方、息のしかたといったふだんの癖も重なっています。どちらの影響が大きいかは、見た目だけでは分けにくいものです。そのため歯科医院では、セファロ(頭部X線規格写真)という矯正用のレントゲンで、骨の角度や前歯の傾きを調べ、見きわめる手がかりにします。


乳歯のむし歯や早く抜けることも永久歯の並びに関わる


前歯の見え方や歯並びは、呼吸や骨格だけでなく、乳歯の状態とも関わっています。乳歯には、後から生えてくる永久歯のためのスペースを確保し、正しい位置へ導く役割があります3。


もし乳歯がむし歯などで本来の時期より早く失われてしまうと、両隣の歯が空いた場所へ倒れ込み、永久歯が生えるスペースが狭くなって歯並びが乱れることがあります3。また、口呼吸でお口の中が乾燥すると唾液の自浄作用が働きにくくなるため、むし歯の予防と歯並びの確認は合わせて進めていくことが大切です。成長期の矯正を検討する際も、年齢だけで開始時期を決めるのではなく、むし歯の有無や生え替わりの段階、顎の成長を見極めて判断します。


家庭ではどんなサインを観察し、どう対応すればよい?


ご家庭では、起きている時と寝ている時の口元の様子や、鼻づまりの続き方を数週間ほどメモしておくと、受診時の判断材料になります。「口を閉じて」と注意を繰り返すよりも、まずは鼻で息ができているかを確かめることが先決です。


起きている時と寝ている時で記録したいお口ポカンのサイン


お子様の様子を見る際は、意識が他に向いている時間帯と睡眠中の両方に目を向けてみてください。お忙しい日々の中でも、以下のような項目をスマートフォンでメモしたり、寝姿や口元の写真・短い動画を残しておいたりすると、診察時に状況が伝わりやすくなります。


  • 日中の様子:宿題や動画視聴など集中している時に口が開いているか、上唇が乾いて白っぽくなっていないか、唇を頻繁になめる癖や上の前歯の茶色い着色汚れがないか、食事中に口を開けて音を立てて噛んでいないか
  • 睡眠中の様子:毎晩のようにいびきをかいていないか、口を開けて寝ていないか、睡眠中に呼吸が一時的に止まるように見える場面がないか、朝起きた時に口が強く乾いていたり機嫌が悪かったりしないか

鼻づまりの続き方は「頻度・季節・時間帯」で数週間メモする


口が開いている背景に鼻のトラブルが隠れていないかを知るため、鼻づまりの続き方も合わせて記録しておきましょう。カレンダーに丸をつける程度の簡単なメモで十分です。


風邪をひいた時だけ詰まるのか、春や秋など特定の季節に強まるのか、一年を通してずっと鼻声や鼻づまりが続くのかを見ておきましょう。その違いによって、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、扁桃・アデノイドの肥大など、考えられる原因が異なります。特に扁桃やアデノイドの肥大は気道を狭くし、口呼吸や開咬に関わる要因の一つとして挙げられています2。


また、夜寝る時や朝方だけ鼻が詰まるといった時間帯の特徴も、医師が状態を把握する手がかりになります。


「口を閉じて」と注意する前に鼻の通りを確かめたい理由


お子様の口が開いていると、つい「お口を閉じなさい」と声をかけたくなるものですが、鼻が詰まっているお子様にとって口呼吸は、体に必要な酸素を取り込むための大切な手段です。鼻の通りが悪い状態では、本人の意識や努力だけで口を閉じ続けることは困難です。


鼻づまりがあるまま市販の口閉じテープを使ったり、口周りの筋トレを無理に行わせたりすると、かえって呼吸が苦しくなるため控えてください。お口周りの筋肉や舌の位置を整える練習(口腔筋機能療法:MFT)は、鼻で楽に息ができることを確かめてから始めます。食事の時に足の裏を床につけてよく噛むといった無理のない日常の工夫と一緒に、少しずつ取り入れていくのが穏やかな進め方です。


ポイント

鼻が詰まっていると自分の意思だけでは口を閉じられません。練習や対策を始める前に、まず鼻で楽に呼吸できているかを確認しましょう。


歯科と耳鼻咽喉科、どちらに先に相談すればよい?


鼻づまりやいびき、睡眠中の呼吸の乱れが目立つ場合は耳鼻咽喉科を先に受診し、前歯の傾きや噛み合わせ、舌の癖が主に気になる場合は歯科医院で相談するのが一つの目安です。両方のサインがある場合は、それぞれの科で原因を確認し連携して進めることが望まれます。


相談先の目安主に気になるサイン医療機関で確認する主な内容
耳鼻咽喉科を先に検討・慢性的な鼻づまり、鼻声<br>・毎晩のいびき、寝苦しさ<br>・日中の強い眠気・鼻の粘膜やアレルギーの有無<br>・扁桃やアデノイドの大きさ<br>・必要に応じた睡眠中の呼吸の評価
歯科医院を先に検討・前歯の突出や重なり、すき間<br>・前歯で食べ物を噛み切りにくい<br>・鼻は通っているがお口が開く・歯の生え替わりと噛み合わせ<br>・セファロ等による顎の骨格分析<br>・舌の位置や唇を閉じる力の確認

上記はあくまで目安であり、どちらから受診しても間違いではありません。迷う場合はかかりつけ医に相談し、鼻の通りと歯並びの双方から状態を整理していくことが大切です。


鼻づまり・いびき・睡眠中の呼吸の乱れが目立つなら耳鼻咽喉科を先に検討


一年を通した鼻づまりや、毎晩のように続く大きないびき、寝ている間に呼吸が止まるように見える様子、日中の強い眠気や集中しにくさがある場合は、まず耳鼻咽喉科での確認をご検討ください。


耳鼻咽喉科では、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の有無、扁桃やアデノイドの肥大による気道の狭さなどを調べ、必要に応じて睡眠時無呼吸の評価や治療を行います。鼻の通りが悪いまま歯並びの治療や口元のトレーニングだけを始めても、呼吸が苦しければ口呼吸は改善しにくく、治療後の後戻りにつながることもあります。


歯並びや口元が気になるなら歯科で確認する検査とその目的


鼻の通りに大きな問題がない場合や、生え替わり中の歯並び・噛み合わせそのものが気になる場合は、歯科医院での確認が適しています。歯科ではお口の中の診察や写真撮影に加え、目的に応じて以下のような検査を検討します。


  • セファロ(頭部X線規格写真):顔の骨格の成長方向や上下の顎のバランス、前歯の傾きを数値や角度で分析するレントゲン検査1
  • 歯科用CT:顎の骨の厚みや、まだ骨の中に埋まっている永久歯の位置・向きを立体的に把握する検査
  • 口腔内スキャナー(iTeroなど):小型カメラでお口の中を撮影し、現在の歯列や噛み合わせを3Dデータとして記録する機器

小児矯正を進めるうえで重要になるのは、装置を先に決めることではなく、事前の「矯正診断」です。骨格的な要因と口呼吸などの習慣的な要因を見極めたうえで、今から装置を使うか、生え替わりを待つ経過観察にするかを判断します。


なお、小児矯正(第1期治療)は、多くの場合は保険が使えない自由診療です。ただし、唇顎口蓋裂などの生まれつきの病気や、あごの骨の形が原因のかみ合わせの乱れでは、決められた医療機関で保険が使えることがあります。


費用のおおよその目安は、検査や装置、調整などをふくめて30万〜60万円ほどです。ここに書いた金額は一般的な目安で、当院の費用ではありません。実際の費用やふくまれるものは、医療機関によってちがいます。


矯正治療では、装置をつけてしばらくは違和感や痛みが出ることがあり、ふつうは数日から1〜2週間ほどで慣れていきます4。ほかにも、歯ぐきの炎症やむし歯、治療後に歯が元の位置へ戻ろうとする後戻りなどのリスクがあります。


名古屋市中区の当院で相談するときに伝えていただきたいこと


名古屋市中区にある当院は金山駅5番出口から徒歩2分の場所にあり、お子様の習い事の送迎や保護者の方のお仕事帰りにも立ち寄りやすい環境です。歯並びの相談に来たからといって、その場ですぐに矯正治療を始めなければならないわけではありません。


ご相談の際には、ご家庭でメモした日中や睡眠中の様子、鼻づまりの頻度、スマートフォンで撮影した寝姿のお写真、これまでの耳鼻咽喉科の受診歴、そして保護者の方ご自身の矯正経験などを遠慮なくお聞かせください。期間や費用への疑問も含めて丁寧にお伺いし、お子様のペースに合わせてまずは現在のお口の状態を確かめるところから一緒に考えてまいります。


よくある質問


Q. 口呼吸が続くと「口ゴボ」や人中が長く見える原因になりますか?


A. 口呼吸によって舌が下がり唇を閉じる力が弱まると、上の前歯が前方へ傾きやすくなり、結果として口元が前に出て見える(いわゆる口ゴボの印象になる)場合があります1。また、普段から口が半開きになっていると上唇の筋肉が使われにくくなり、鼻の下(人中)が伸びて見えると感じる方もいます。ただし、口元の見え方には生まれつきの骨格や歯の大きさも関わるため、歯科医院のセファロ検査などで骨格と歯の傾きのどちらが影響しているかを確認することが大切です。


Q. 子供が歯列矯正を始めると、話し方や滑舌は変わりますか?


A. 矯正装置をつけた直後は、お口の中のスペースが変化するため、サ行やタ行などが一時的に発音しにくくなることがあります。多くのお子様は数日から数週間ほどで装置に慣れて普段通りに話せるようになりますが、もともと舌が低い位置にあるお子様や舌癖がある場合は、装置と合わせて舌を正しい位置へ導く練習を取り入れることもあります。授業での音読や習い事など、学校生活で心配な場面があれば事前に歯科医師へお伝えください。


Q. 小児矯正の治療期間や通院頻度はどのくらいを見込めばよいですか?


A. 治療の期間や通うペースは、使う装置やお口の状態によって大きく変わります。お子様のあごの成長や生え替わりを生かす第1期治療は1年から2年ほどが一つの目安で、その後は歯の生え方やあごの育ちを定期的に見ていきます5。歯を動かしている間は、装置を調整するために月に1回ほど通うのが一般的です6。


参考文献


1. Zhao Z, Zheng L, Huang X et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC oral health (2021). PMID: 33691678 / DOI: 10.1186/s12903-021-01458-7

2. Lentini-Oliveira DA, Carvalho FR, Rodrigues CG et al. Orthodontic and orthopaedic treatment for anterior open bite in children. The Cochrane database of systematic reviews (2014). PMID: 25247473 / DOI: 10.1002/14651858.CD005515.pub3

3. 岡山大学病院 歯と口のトラブルマップ | 病名から探す. https://www.hsc.okayama-u.ac.jp/hospital/dnavi/disease.html

4. 矯正歯科|診療科|診療科・部門|日本歯科大学附属病院. https://www.tky.ndu.ac.jp/hospital/departments/section/orthodontics.html

5. 矯正歯科 – 東北大学病院. https://www.hosp.tohoku.ac.jp/departments/d2103/

6. 矯正歯科 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/index08.html


長坂 健央

歯科医師


金山ファイン歯科・矯正歯科

理事長

長坂 健央

▶ 監修者プロフィール

経歴
2011年 愛知学院大学歯学部 卒業
2011年 愛知学院大学歯学部附属病院 総合診療科
2012年 医療法人日進会 名古屋矯正歯科勤務
2015年 医療法人 吉田医院 常勤
2015年 愛知学院大学歯学部助教(非常勤)
2016年6月 長坂歯科・矯正歯科開院
2018年 論文発表
2019年 医療法人社団 健正会 理事長 就任
2020年 歯学博士 取得
2020年 愛知学院大学歯学部講師(非常勤)
2021年 金山ファイン歯科・矯正歯科 開院
2024年 名駅ファイン歯科・矯正歯科 開院
2024年 Fine歯科 開院
2026年 中川ファイン歯科・矯正歯科・ファミリー歯科 開院
資格・所属学会
日本矯正歯科学会
日本成人矯正歯科学会
日本舌側矯正歯科学会
日本顎咬合学会 認定医
DFG
日本老年歯科医学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
インビザライン認定医
東海リンガル研究会
歯科から医療を考える会幹事
厚生労働省認定指導医
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会
中区歯科医師会